ダンス仲間に、空港でバッタリと会いました。
この夏に、家族で旅行したときのこと。飛行機でチューリヒに着いて、スーツケースを受け取ろうと荷物が出てくる場所に向かっていたら、後ろから「こんにちは」と声をかけられました。すぐさま、背の高い女性が私の横に並びました。
はて、誰だったかしら。その女性に見覚えはありませんでした。
「Niaのダンス教室に行ってるわよね?」。そう聞かれて。ああ、そういえば、この女性と一緒に何度か踊ったことがある、と気が付きました。
彼女はレッスンが終わると、いつもサッと帰っていました。言葉を交わしたことがなかったので、そうやって話しかけてくれたことにかなり驚きました。「私、●●に2週間行ってきたの」と言い、私と同じ町に旅行していたと知りました。そう、彼女と私は同じ飛行機に乗っていたのです。
搭乗のときはまったく気が付きませんでした。彼女もそうだったのでしょう。
声をかけてもらったのは嬉しかったものの、なんとなくポンポンと言葉が出てきませんでした。荷物が出てくるベルトコンベヤーがもう目の前でした。
スーツケースはすぐに出てくるわけではなかったので、2人で立ち話ができたけれど、話を切り上げなければいけないかなと思い、彼女も同感だったようです。「では、またね、元気で」と彼女の方からさよならを切り出しました。
ベルトコンベヤーを挟むようにして、私は家族と左側へ、彼女は1人で右側へ向かいました。
私たちの荷物はなかなか出てきませんでした。彼女のもとへ行って話そうかと思いましたが、なんだか、その場を動けませんでした。
空港というのは特別な空間。「くつろぎを保てる空間」なのに、どうもソワソワする気持ちが心の片隅にあります。飛行機に乗るにしろ、ホテルに行くにしろ、家に帰るにしろ、この場所から早く去りたい、知っている人にもあまり会いたくない、というような。
彼女と話がはずまなかったのは、そんな、場がもたらす作用が関係していたのかもしれないなと、空港を離れてから思いました。